家に名前をつけてもいいの?『赤毛のアン』や『嵐が丘』にみる家の名前が持つ力〜
「家にも、名前をつけてみたいな」
そう思ったことはありませんか?
家に名前?と思いつつも、心のどこかであたたかく響く気持ち。
子どものころに読んだ物語には、そんな“名前のある家”がよく登場していました。
『赤毛のアン』のグリーン・ゲイブルズ。
『嵐が丘』のワザリング・ハイツ。
名前があることで、家はただの建物ではなく、物語が息づく「舞台」として記憶に残ります。
今回は、そんな「家の名前」が持つちからと、現実の暮らしで名前をつけるときの注意点をやさしく見つめてみましょう。

物語を彩る、忘れられない名前
『赤毛のアン』のグリーン・ゲイブルズ
プリンス・エドワード島の緑豊かな風景の中にある「グリーン・ゲイブルズ」。
アンが住むことになる、カスバート家の屋号で「緑の桐妻屋根」という意味です。
アンにとって、それは初めて「自分の居場所」と呼べるようになった家でした。
アンの想像力はこの名前とともに広がり、マシューやマリラと過ごす日々が、この家を特別な場所に変えていきました。
『嵐が丘』のワザリング・ハイツ
一方で、「ワザリング・ハイツ(嵐が丘)」は、荒々しい自然と情熱的な人間関係が交錯する物語の舞台。
その名前には、風の音や孤独、運命の重さまでもがにじんでいます。
屋敷の名前が、そのまま物語の世界観や登場人物の感情と結びついているのです。
家に名前をつけるのは、物語の中だけじゃない?
家に名前をつける文化は、フィクションの世界だけの話ではありません。
たとえば、イギリスやアイルランド、オーストラリアなどの英語圏の国々では、
家そのものに名前をつけて呼ぶ習慣が今でも残っています。
「The Old Bakery(古いパン屋)」「Rose Cottage(バラのコテージ)」「Hilltop House(丘の上の家)」など、その土地の風景や歴史、住む人の想いが込められた名前が、正式な住所の一部として使われることもあります。
日本の「○○荘」や「○○亭」などに少し近いですが、もっと個人の愛着や詩的な意味合いが込められていて、表札ではなく、郵便物やナビゲーションにもしっかり明記されるケースも多いのです。
こうした背景には、長い年月の中で土地に根づいてきた「暮らしの物語」や、
住まいを大切に思う心があるのかもしれません。
あなたの家に、名前をつけるということ
では、自分の家に名前をつけたくなったら——
それはきっと、「ここでの暮らしを大切にしたい」「帰ってきたくなる場所にしたい」
そんな想いがあるからではないでしょうか。
たとえば私でいえば「ちこりの家」という名前。
どこかやさしくて、土の香りがして、木漏れ日の中でひと息つけるような風景が浮かびます。
それは、誰かに説明するためではなく、自分や家族の日々にささやかな名前をつけたいという意味合いが強いかもしれません。
家の名前と住所のルール
ただし、名前をつけたからといって、それがそのまま正式な住所になるわけではありません。
日本では、住民の暮らしの利便性や行政の管理、郵便配達の正確さを保つために、「住居表示制度」というルールが定められています。
そのため、個人が自由に考えた建物名(家の名前)を、正式な住所として使用することはできません。
たとえば、郵便物の宛名に「ちこりの家 玉田様」と書き、番地や氏名が正確に記載されていれば届くこともありますが、誤配や遅延の原因になることがあるため、住所や宛名の記載には正式なものを使用するように、日本郵便も注意を呼びかけています。
また、公的な書類や契約書などには、必ず自治体が定めた正式な住所を記載する必要があります。
「ちこりの家」のような名前は、あくまで暮らしの中で楽しむ”愛称(ニックネーム)”として、
表札やSNS、家族内での呼び名などに使うのがおすすめです。
表札として「名前のある家」を楽しむには
ただ、自分でつけた家の名前を、表札にすることは可能です。
「ちこりの家」のような呼び名を、玄関先やポストに飾るのは、とても素敵なアイデア。
オリジナルのロゴやマークを入れて見たりするのもいいかもしれません。
(chicoriの真鍮表札では、完全データ入稿であれば、特別料金なしで制作が可能です。)
ただし、注意したいのは、「ちこりの家」の表札だけにしてしまうと、
郵便や宅配の配達の方や初めて訪れる方が戸惑ってしまうこともある、という点です。
そこでおすすめなのは、
- 「ちこりの家 + 苗字」「ちこりの家 + 番地」のように、苗字や番地を併記すること
- 正式な表札とは別に、愛称のプレートをつけて楽しむこと
など、少しだけまわりへの配慮を取り入れること。
配達や来訪がスムーズにいくようにしつつ、「名前のある家」としての愛着を、暮らしの中でしっかり育てることができます。
家に名前をつけることから始まる、家族だけの物語
家に名前があると、お家に人格ができたようで、ちょっぴり愛おしくなる気がしませんか?
物語の中の家のように、名前を持ったその建物が、
あなたや大切な人たちの笑顔や日常の物語で満ちあふれますように。
家に名前をつけることは、
自分たちだけの小さな物語を始めること。
ルールを守りつつ、家族だけの「名前のある家」とのしあわせな暮らしを、楽しんでみてくださいね。