宮沢賢治と真鍮 ─〔つめたき朝の真鍮に〕が映す、祈りのかたち | Brass Note

COLUMN

真鍮のある暮らし

宮沢賢治と真鍮 ─〔つめたき朝の真鍮に〕が映す、祈りのかたち

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私の好きな宮沢賢治は、作品の中にしばしば鉱物や金属を登場させます。
それらは、ただの物質としてではなく、自然の美しさや音、あるいは宇宙の秩序を映し出す象徴として描かれています。

そんな彼の詩のなかに、「真鍮(しんちゅう)」という言葉が登場するものがあるか探してみました。

〔つめたき朝の真鍮に─ 冷たさの中に宿る光の温かさ

つめたき朝の真鍮に
胸をくるしと盛りまつり
こゝろさびしくをろがめば
おん舎利ゆゑにあをじろく
燐光をこそはなちたまへり
     ― 宮沢賢治〔つめたき朝の真鍮に〕より

この短い詩には、「真鍮」という素材が象徴的に登場します。
ひんやりとした金属の感触とともに、心の奥からふと立ちあがるような祈りの気配が漂います。
その冷たさは、無機質なものではなく、やさしさや静けさを宿したものとして描かれているようです。

この詩が書かれた時代 ─ 賢治の1920年代

この詩「つめたき朝の真鍮に」は、生前に発表されることのなかった未発表の詩です。

彼が遺した手稿の中にあり、「文語詩未定稿」という分類に収められています。

正確な執筆年は不明ですが、全集や研究資料によれば、
大正の終わりから昭和のはじめ─
1920年代に書かれたとされています。

宮沢賢治が生きた時代の中でも、とりわけ心の揺らぎが深かったころではないでしょうか。

身近な人の死、そして家族との信仰の違い。

「祈る」という行為は、そのどちらにも向き合うための、深く切実な営みだったのかもしれません。
この時代の賢治は、宗教、自然、そして人間のこころを深く見つめる詩を多く残しました。

「つめたき朝の真鍮に」にも、そうしたまなざしが込められているようです。
では、詩を一節ずつ読みといてみましょう。

詩を読み解く──古語の意味とともに

つめたき朝の真鍮に
 朝の冷えた空気のなか、真鍮の仏具に手を触れたときの感触。
 その冷たさは、神聖さや静謐さを含んでいます。

胸をくるしと盛りまつり
 心の苦しみを、そっと差し出すように祈る。
 盛りまつりは、「捧げ祀る」という古語です。

こゝろさびしくをろがめば
 寂しさを抱えながら、静かに深く拝む。
「をろがむ」は「拝む(おがむ)」の古語。

おん舎利ゆゑにあをじろく/燐光をこそはなちたまへり
 仏舎利のような神聖さが、真鍮から青白い光としてあらわれる──
 それは、心の中にともる救いのようでもあります。

まとめてみると

つめたい朝の真鍮に
胸の苦しさが満ちあふれて
こころ寂しく手を合わせると
燐光が静かに放たれていました

個人的な解釈となりますが、この詩は、信仰のお勤めの時間の情景をうたったものと推測できます。

冷たい朝の空気の中、真鍮の仏具に向かいながら、胸の痛みをそっと捧げるように祈る姿。
賢治にとって、信仰とは日々の営みであると同時に、悲しみや孤独と向き合うための切実な行為でもありました。
青白く放たれる燐光は、仏の慈悲か、あるいは心の中にともるかすかな救いの光のようにも思われます。

静かで張りつめたその時間に、賢治の内面の揺らぎと祈りの深さが、淡くにじむように表れています。

賢治が見つめた真鍮──祈りとともにある素材

この詩に登場する真鍮は、ただの金属ではなく、祈りや感情をそっと受けとめる器のような存在ではないでしょうか。
磨けば光り、時を重ねるとくすみながら深い味わいを帯びるその変化は、人の記憶や思いを映し出す鏡のようにも見えます。

真鍮は冷たい素材でありながら、そこにはやわらかなぬくもりが潜んでいる──
宮沢賢治はそのことを、感覚と言葉で深く捉えていたのかもしれません。

暮らしの中の真鍮──小さな祈りを宿す表札へ

宮沢賢治が見つめた真鍮は、信仰の場にある仏具として描かれています。

けれど、そのまなざしの奥には、もっと身近な「祈るような気持ち」があるようにも感じられます。

たとえばそれは、
「今日もみんな元気でいられますように」と願う朝のひとときや、
「おかえり」と誰かを迎える玄関先の静けさに、ふと重なる気持ちかもしれません。

そう考えると、真鍮は私たちの日常のなかにも、
そっと寄り添ってくれる“祈りのかたち”のような存在だと思えてきます。

家族の証を刻む、やさしい表札

そんな真鍮を、暮らしの入り口に取り入れたのが、chicoriの真鍮表札です。

冷たいけれどやわらかい、
凛としているのに、どこかやさしい──
真鍮という素材の魅力をそのままに、家族の証であるお名前を美しく映し出してくれます。

ひとつずつ丁寧に手書きから生まれる筆記体の文字は、
ただの装飾ではなく、「この家の名前であること」の重みとやさしさを同時に伝えてくれるもの。

光の角度によって表情が変わるその文字は、
朝の日差し、雨あがりの水滴、夕方のやわらかい光…
日々のうつろいを受けとめて、あなたの暮らしとともに色づいていきます。

静かな美しさを、玄関に

毎日目にする場所だからこそ、静かで、あたたかいものを選びたい。
そんな気持ちに寄り添ってくれるのが、真鍮の表札です。

賢治が詩に込めたような「冷たさの中のやさしさ」──
その感覚を、あなたの暮らしのなかに、そっと迎えてみませんか?

chicoriの真鍮表札は、そんな想いに応える、やさしい光を宿しています。

あなたの玄関にも、小さな祈りを受け止めてくれる真鍮表札を迎えてみませんか?
静かな朝のひかりとともに、暮らしの物語がはじまります。


 

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