真鍮のサビは味方?そのメカニズムとお手入れ方法を解説

この記事では、真鍮表札がなぜサビるのかというメカニズムをはじめ、設置環境によって異なる変化のあらわれ方や、chicoriの製品を長く楽しんでいただくためのお手入れ方法をご紹介します。
真鍮とサビの関係
真鍮とはどんな素材?
真鍮は、銅と亜鉛を主成分とする合金で、古くから楽器や装飾品、家具金物などに使用されてきました。加工がしやすく、落ち着いた光沢と高い耐久性を持つ素材であり、真鍮ならではの色味と風合いが多くの方に親しまれています。
chicoriの真鍮表札は、クリア塗装などのコーティングを施さず、あえて無塗装で仕上げているのが特徴です。経年とともに表情が変わっていく過程を楽しんでいただける仕様です。
サビのしくみと役割
真鍮は空気中の水分や酸素と反応して徐々に酸化が進み、表面にサビが現れます。湿度が高い環境では金属の表面に水分の膜ができ、それが電解質の役割を果たして電気化学的な反応が起こりやすくなります。
銅の成分は酸化して緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色に、亜鉛は白っぽく変色するなど、さまざまな色の変化が見られます。
真鍮のサビは、鉄の「赤錆(あかさび)」のように素材がもろくなって崩れていくようなものではありません。鉄の赤錆は進行すると表面がはがれ落ちたり、強度が失われたりすることがありますが、真鍮の場合はそのような腐食の仕方をしません。
むしろ、真鍮のサビは、鉄でいう「黒錆(くろさび)」のような役割に近く、表面に酸化皮膜ができることで内部を守るはたらきを持っています。
つまり、真鍮のサビは、単なる劣化ではなく、素材の表情として自然にあらわれる変化のひとつです。
サビとどう付き合うか
サビのあらわれ方はさまざま
真鍮表札のサビや変色のあらわれ方は、設置する場所や周辺の環境によって大きく異なります。湿気の多い場所、雨や雪にさらされやすい環境、また潮風が当たる地域では、変化の進み方も早くなる傾向があります。
また、表面の変色にも個体差があり、青緑色、白っぽいもや、赤みを帯びたピンク色、深い茶色など、さまざまな表情が現れます。こうした変化はどれもがその場所、そのご家庭だけの経年変化であり、世界にひとつの風合いへと育っていきます。
素手で触れると指紋が浮かび上がることがあります
無塗装の真鍮表札は、素手で触れた部分が時間の経過とともに濃く変色し、指紋の跡が浮かび上がることがあります。これは触れた瞬間に変色するわけではなく、手の皮脂や汗に含まれる成分と真鍮がゆっくり反応することで起こる現象です。(ただし、真鍮の変化がある程度進んでくると表面が安定し、素手で触れてもその跡が残りにくくなっていきます。)
蜜蝋クリームを塗っていても、この変色を完全に防ぐことはできず、素手で触れた部分に変化が生じることがあります。そのため、表札の設置時やお手入れの際には手袋を着用して作業していただくようお願いしています。指紋などが残りにくくなり、より自然でなめらかな経年変化を楽しんでいただけます。
お手入れとメンテナンス
日々のお手入れ
真鍮表札の日常のお手入れは、乾いた柔らかい布で軽くホコリを拭き取る程度で十分です。無理に磨いたり、頻繁にこすったりする必要はありません。
真鍮は時間とともに自然に変化していく素材ですので、素材の呼吸に任せて、ゆっくりと育てていくような気持ちでお付き合いいただけたらと思います。
蜜蝋クリームによる保護
chicoriでは、真鍮表札の表面保護に蜜蝋クリームの使用をおすすめしています。蜜蝋は天然素材でできており、表面にうすく膜をつくることで、湿気や汚れの付着を緩やかにします。
ただし、蜜蝋クリームを塗布したとしても変色を完全に防ぐことはできません。あくまで変色の進行を緩やかにすることを目的としたケア方法です。
特に新品のうちは変化が起こりやすいため、雨や雪にさらされた後などは、様子を見ながら塗り直していただくと安心です。変化が落ち着いてくると、塗り直しの頻度もゆっくりで大丈夫です。
蜜蝋クリームの塗り方については、下記の動画で詳しくご紹介しています。
変色が気になる場合の対処方法
真鍮の変色は、前述のとおり化学反応によって起こるもので、水や洗剤で拭いても落とすことができません。
インターネットなどで紹介されている重曹や酢を使った方法は、真鍮の表面や刻印部分に想定外の反応を起こすことがあり、文字の黒染めが落ちてしまう恐れがあります。
また、ピカールなどの金属磨き剤を使用すると、表面に艶が出すぎてしまい、本来のマットな質感が損なわれることがあります。
そのため、chicoriではこうした方法をおすすめしておりません。
変色が気になる場合は、当店が推奨する方法でのお手入れをお試しください。設置したまま磨くことができるよう、画像付きのガイドをご用意しています。
おわりに
真鍮表札の変化は、「劣化」ではなく「味わい」や「個性」としてとらえることができます。雨風や空気と向き合いながら少しずつ変化していく姿は、ご自宅の雰囲気とともに馴染んでいく過程そのものです。
chicoriでは、そうした素材の特性を活かし、真鍮の魅力を感じていただける製品づくりを心がけています。暮らしの中で育っていく表札を、末永くお楽しみいただければ幸いです。
なお、真鍮表札といっても製品によって加工や仕上げが異なるため、お手入れ方法もそれぞれの仕様に合わせていただくのが安心です。この記事でご紹介している内容は、あくまでchicoriの真鍮表札を前提としたものとなります。他社製品については、それぞれの案内に沿ってメンテナンスしていただけますようお願いいたします。