プロの目が整える、文字の美しさ—表札デザインにおけるカーニングの力

長く暮らしを共にする表札。だからこそ、美しく整った文字組みにこだわりたいものです。WEB上で自動的にレイアウトされるデザインも便利ではありますが、chicoriでは、プロの目で一つひとつ微調整しながら、美しい仕上がりになるよう丁寧に組んでいます。この記事では、文字組みに欠かせない「カーニング」の基本から、美しい表札を実現するためのフォント選びや整列の技術、さらには実際のデザイン例まで、じっくりとご紹介します。
文字組みの要、カーニングとは
カーニングとは、文字と文字の間の空間(スペース)を微調整する技術のこと。単に等間隔で文字を並べるだけではなく、隣り合う文字の形や組み合わせを見て、心地よく見えるように手作業で調整することがポイントです。たとえば「T」と「A」のような文字は、標準の間隔のままだと隙間が広く感じられ、間延びした印象になってしまうことがあります。カーニングを行うことで、視覚的に自然な流れを生み、読みやすさと美しさを両立することができます。
飽きのこない表札に──普遍的な6つの書体
chicoriでは、真鍮の経年変化と調和する、普遍的な美しさをもつ6つの書体を採用しています。これらは世界的にも評価の高い、高品質なフォントばかり。数十年経っても古びず、飽きずに愛せるものばかりです。
書体A:Copperplate Gothic:DEAN & DELUCAのロゴやマリアージュ フレールのコーポレートフォントとして知られ、クラシカルでありながら洗練された印象を与えます。

書体B:Univers:スイスインターナショナルエアラインズや三洋電機のロゴタイプに使用され、現代的で読みやすいデザインが特徴です。chicoriで採用しているUniversはコンデンス書体(長体)です。横幅が狭いため、文字数が多い苗字の方にもおすすめです。

書体C:Trajan:三井住友銀行のロゴや映画『タイタニック』のタイトルでも知られ、繊細で格式のある印象を演出します。

書体D:Bodoni:女性ファッション誌『ELLE』のロゴに使われるほか、レディー・ガガやニルヴァーナのアートワークにも登場し、モダンとクラシックを併せ持つスタイルです。

書体E:Gotham:Spotify、TACO BELL、三菱UFJフィナンシャル・グループなどのロゴで使用され、力強く信頼感のある印象を与えます。

書体F:Garamond:L’OCCITANEのロゴや、過去にAppleのコーポレートフォントとしても使われたクラシックで知的な書体です。

整った印象をつくるレイアウトと整列
表札のデザインでは、プレートのサイズと文字数に対して、文字の大きさや配置をどのように整えるかが重要なポイントです。文字数が少ない場合は間延びして見えないように、文字数が多い場合は読みやすさが損なわれないように、全体のバランスを見ながら調整していきます。
また、表札では視認性と全体の印象の美しさがとても大切です。整った配置は、見る人に落ち着きと品のある印象を与え、住まい全体の佇まいにも調和をもたらします。chicoriでは、一つひとつのレイアウトを丁寧に整えながら、端正で心地よい仕上がりを目指しています。
伝統とモダン──表札デザインの実例

表札はその家の顔ともいえる存在です。伝統的な趣のある住まいには、風合いのある素材と歴史を感じる書体がよく似合います。たとえば、真鍮のプレートにCopperplate GothicやGaramondを組み合わせることで、重厚で落ち着いた印象を与えることができます。Trajanのようにクラシカルで上品な書体は、建物の品格を静かに引き立ててくれます。
一方、モダンな住まいには、洗練されたシンプルさが映えるフォントがおすすめです。Gothamのような端正で現代的な書体は、スタイリッシュで都会的な印象に仕上がります。Universはすっきりとした構造の中に力強さも感じられるフォントで、カリフォルニアスタイルや「BESSの家」のようなナチュラルで開放感のある住まいにもよく馴染みます。
また、Bodoniのようにモダンさとクラシックな雰囲気を併せ持つ書体は、洗練された個性を演出したいときに最適です。
chicoriでは、伝統的な趣と現代的な感性を併せ持つデザインをご提案しています。素材の変化と共に味わいが増す真鍮に、時間と共に愛着が深まる文字組み──そんな一枚をお届けできるよう、細部まで心を込めて制作しています。