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もし金で表札を作ったら?|真鍮との違いと現実的な選び方

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もし金で表札を作ったら?|真鍮との違いと現実的な選び方

たとえば、玄関の表札を「純金」で作ったらどうなるでしょうか。きらびやかで高級感はあるけれど、果たして現実的なのでしょうか。金と真鍮という見た目のよく似た2つの素材を比較しながら、実際に金で表札を作った場合のコストや性質、さらには真鍮が表札に選ばれる理由について掘り下げていきます。

純金の表札?

もし金で表札を作ったら?その驚きの価格とは

仮に150mm × 150mm × 3mmの表札を純金で作った場合、その重さは約1.3kgになります。金の比重は19.32g/cm³で、体積67.5cm³から換算するとおよそ1,304g。2025年4月時点の金価格(1gあたり約16,883円)をもとにすると、

→ 約2,200万円という驚きの価格になります。

このように、素材だけで約2,200万円という高額になるため、現実的に表札として使用するのは不可能に近い素材といえます。

真鍮と金の性質の違いとその魅力

金と真鍮は、見た目はよく似ていても、性質も価格もまったく異なる金属です。ここでは、素材の性質や使用目的に合わせた選び方を紹介します。

素材と特性の違い

  • 金(Au):純粋な元素。酸化や腐食に強く、色が変わらず美しさが長持ち。非常に柔らかく高価。
  • 真鍮(Brass):銅と亜鉛の合金。加工しやすく、硬さもあり、時間とともに変化する風合いを楽しめる。比較的安価。

金は宝飾品や資産としての価値が高く、真鍮は装飾性と耐久性を兼ね備えた実用的な素材です。

変わらぬ金の美しさと真鍮の味わい深い変化

金は化学的に非常に安定しており、輝きを変えません。たとえば、純金のアクセサリーは身につけたまま温泉に入っても変色しないほどで、その耐久性と変わらぬ美しさは、長年愛用されるアイテムにふさわしい特性です。

一方で、真鍮は空気中の成分と反応し、時間とともに落ち着いた深い色合いへと変化します。これは“経年変化”として、素材を育てるような楽しみ方ができます。

表札という視点で考える素材の選び方

表札は、屋外に設置され、風雨にさらされる環境で使用されるため、素材には高い耐久性とメンテナンス性が求められます。

  • 金の欠点:柔らかく傷つきやすい、盗難リスクが高い、価格が現実的でない。
  • 真鍮の利点:硬くて丈夫、加工性に優れ、自然な変化を楽しめる、コストも抑えられる。

chicoriの真鍮表札は、無塗装で仕上げることで、素材本来の風合いを楽しめるよう設計されています。時間とともに家と共に育つような感覚があり、住まいに馴染む存在として多く選ばれています。

見た目だけではわからない、素材の本当の価値

見た目だけを比べれば、真鍮は金に似た美しさを持っていますが、使い方や背景にある文化までを含めて見てみると、それぞれに異なる魅力があります。特に真鍮は、ただの代用品ではなく、「変化を楽しめる素材」としての価値を持っています。

まとめと選び方のヒント

「もし金で表札を作ったら?」という想像から始まったこの記事。実際には、2,000万円を超えるコストと現実的でない使用条件が浮かび上がってきました。その一方で、真鍮は、コスト・デザイン性・耐久性のバランスに優れ、表札という用途においては最も適した素材のひとつといえます。

きらびやかさよりも、「時を重ねて味わいが深まる」ことに価値を見出すなら、真鍮表札はきっと満足できる選択になるはずです。


 

この記事の著者

葛 西

1977年生まれ。幼少期を家業の看板屋の工場で過ごし、真鍮の経年変化の魅力の虜に。美術大学卒業後に実家の看板屋へ。10年間勤務後、洋服のセレクトショップ「chicori」を開業し、その中でオリジナル商品の真鍮表札の製造販売を始める。2023年より真鍮表札専門店として新たに歩み始める。妻と娘、息子の4人家族。最近ギターを習い始める。真鍮のように時を重ねる楽しさを届けたい。

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