真鍮に見える?見えない?素材の真実と本物へのこだわり
私たちの身の回りには、実は多くの真鍮製品が潜んでいます。しかし、見た目だけでは真鍮だと気づかないものもあれば、逆に真鍮のように見えても中身は異なる素材でできたものも存在します。本物の真鍮は、その質感や経年変化による美しさで長年愛されてきました。この記事では、真鍮に見えないけれど実は真鍮のもの、そして真鍮に見えるけれど違う素材のものを身近な例とともに紹介し、最後に本物の素材にこだわる理由をお伝えします。

真鍮には見えないけれど、実は真鍮製のもの
クロムメッキや古美加工された真鍮製品
真鍮はもともと温かみのある金色を持つ素材ですが、表面加工によってまったく異なる印象を持つことがあります。クロムメッキやニッケルメッキを施された真鍮製品は、銀白色に輝き、見た目はステンレスや鉄製品のように見えます。また、古美加工(アンティーク仕上げ)によって、黒味がかったり深い茶色になったりすることもあります。こうした加工は、デザインや用途に応じた機能美を持たせるために行われており、外観だけでは素材を見抜くのが難しくなっています。
身近に潜む真鍮:水栓金具やドアノブ、鍵
家庭内の水栓金具やドアノブ、鍵などにも、実は真鍮が多く使われています。特に水回りの製品では、耐食性や加工性の高さから真鍮が重宝されています。しかし、水栓金具に関しては、真鍮のままでは表面に緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色のサビが発生するため、表面にクロムメッキやニッケルメッキが施されるのが一般的です。この技術が広まったのは1950年代以降、住宅設備の近代化と衛生意識の高まりが背景にあります。クロムメッキは耐久性と抗菌性に優れ、清潔感ある外観を長期間維持できるため、水回り製品には理想的な仕上げとされました。見た目はステンレスのようでも、内部にはしっかりと真鍮の強さとしなやかさが活かされています。
真鍮が選ばれる理由とは
真鍮は耐久性に優れ、加工がしやすく、さらに美しい質感を持っています。酸化しにくく、適度な硬さと柔らかさを併せ持つため、精密なパーツにも適しているのです。これらの特性が、表面にどんな加工が施されていても、内部素材に真鍮が選ばれる理由です。
真鍮に見えるけれど、実は真鍮ではないもの
真鍮風メッキや塗装による製品
真鍮のような美しい見た目を再現するために、異なる素材に真鍮風のメッキや塗装を施した製品も多く存在します。鉄やアルミ、亜鉛合金、さらにはプラスチック製のパーツに、真鍮色のメッキをかけて見た目を仕上げる方法です。真鍮色のメッキには、実際にごく薄い真鍮(銅と亜鉛)を用いる「真鍮メッキ」と呼ばれる工程があり、電気メッキにより薄く金属被膜を作る方法が一般的です。これにより、真鍮らしい色味を手軽に再現できる一方で、表層だけに留まるため、内部素材の特性には影響を与えません。
新品では違いがわかりにくい理由
こうした真鍮風の製品は、新品の段階では本物の真鍮と区別がつきにくいことがあります。真鍮色メッキは非常に精巧で、表面の光沢も美しく仕上げられているからです。特に量産品では、手に取っただけでは素材を見分けるのが困難なケースも多々あります。
経年変化の有無が見抜くヒント
しかし、年月が経つと違いが明らかになります。本物の真鍮は、空気中の成分と反応して徐々に深い色合いに変化していきますが、メッキや塗装製品は表面が剥がれたり、下地の素材が露出したりすることがあります。経年による自然な変化が見られるかどうかは、本物と偽物を見極める大きなポイントとなります。
やっぱり本物がいい。本物の真鍮にこだわる理由
素材を育てる楽しみ、経年変化の美しさ
真鍮の魅力は、使い込むほどに深まる色合いや質感にあります。新品のときの輝きも美しいものですが、年月とともに落ち着いた表情へと変わっていく過程こそが、本物の真鍮の楽しみです。まるで素材を育てるような感覚が味わえる点が、真鍮の最大の魅力といえるでしょう。
見た目だけではない、確かな存在感としての重み
さらに、真鍮には独特の重みと、手に取ったときのしっとりとした冷たさがあります。表札は設置後に手に触れる機会は少ないかもしれませんが、その重みは確実に存在し、住まいに落ち着きと重厚感を与えます。見た目だけを模倣した製品にはない、素材自体が持つ存在感。それは、日々の生活の中で、何気ない瞬間に確かな満足感をもたらしてくれます。
chicoriの真鍮表札に込めた思い
私自身も、本物の真鍮に惹かれ続けています。だからこそ、chicoriの表札は無塗装仕上げの真鍮プレートにこだわり、素材の持つ力をそのまま活かしています。使い込むほどに自分だけの表情をまとっていく表札。それは単なる名札ではなく、時間とともに育つ“家の顔”となってくれると信じています。
まとめ
真鍮に見えるけれど違うもの、逆に真鍮らしくない見た目でも本物の真鍮という例は、身の回りに意外と多く存在します。それでも私は、本物の真鍮が持つ経年変化の美しさ、重み、そして育てる楽しみを何より大切にしたいと感じています。だからこそ、真鍮という素材を信じて、chicoriでは無塗装仕上げの真鍮表札を手掛けています。本物にしか出せない味わいを、ぜひ生活の中で感じてみてください。